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「干支(えと)の世界」

・・・漢字の組み合わせの妙・・・
 かねてからカレンダーの日付の横などに書いてある「かのえ」「つちのと」「きのえ」・・・ということばの語源を知りたいと思っていたが、女偏の漢字をたどっていくうち、どういうわけか「干支」にたどりついた。
よく、今年の「えと」は「寅歳」です、というように言われているが、正しくはちがうようです。
 「干支(えと)」は、正しくは「五行」、「十干」、「十二支」の漢字の組み合わせで構成されたもので、「きのえね」、「きのとうし」「ひのえうま」などのように呼ばれて、年をあらわすのに使われています。
ちなみに、平成十年は「戊寅(つちのえとら)」の歳です。十干の五番目の「戊」と十二支の三番目の「寅」の組み合わせの「干支」です。
 「五行(ごぎょう)」とは、古代の人々が万物を構成していると考えた、「木(もく)」、「火(か)」、「土(ど)」、「金(きん)」、「水(すい)」の、五つの元素の総称です。
 「十干(じっかん)」とは、「甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)」の総称で、
上の「五行」をそれぞれ、兄(え)と、弟(と)に分けたものとされています。

すなわち、まず「五行」の最初の「木」を、兄(え)に「甲」、弟(と)に「乙」を配して、それぞれ「甲」を、木(き)の兄(え)すなわち「きのえ」、「乙」を、木(き)の弟(と)すなわち「きのと」、と呼んでいます。

これを順に繰り返して

・「丙」は、「火(ひ)」の兄(え)、すなわち・・・「ひのえ」
・「丁」は、「火(ひ)」の弟(と)、すなわち・・・「ひのと」
・「戊」は、「土(つち)」の兄(え)、すなわち・・「つちのえ」
・「己」は、「土(つち)」の弟(と)、すなわち・・「つちのと」
・「庚」は、「金(か)」の兄(え)、すなわち・・・「かのえ」
・「辛」は、「金(か)」の弟(と)、すなわち・・・「かのと」
・「壬」は、「水(みず)」の兄(え)、すなわち・・「みずのえ」
・「癸」は、「水(みず)」の弟(と)、すなわち・・「みずのと」

のように、組み合わされ、呼ばれています。

 「十二支(じゅうにし)」は、一般に「干支(えと)」と混同されて使われているようですが、
「子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)」
のことで、年、時刻、方角等を表わすのに使われています。
口では言えても、漢字で書くとなると、なかなかむずかしいです。

 「干支(えと)」は、「十干」に「十二支」をひとつずつ順次組み合わせたものです。
今年は「丙寅の歳」というように、これで年をあらわしています。

その組み合わせを、まとめてみました。
十干十二支干支(えと)
1甲(きのえ)子(ね)甲子(きのえ・ね)
2乙(きのと)丑(うし)乙丑(きのと・うし)
3丙(ひのえ)寅(とら)丙寅(ひのえ・とら)
4丁(ひのと)卯(う)丁卯(ひのと・う)
5戊(つちのえ)辰(たつ)戊辰(つちのえ・たつ)
6己(つちのと)巳(み)己巳(つちのと・み)
7庚(かのえ)午(うま)庚午(かのえ・うま)
8辛(かのと)未(ひつじ)辛未(かのと・ひつじ)
9壬(みずのえ)申(さる)壬申(みずのえ・さる)
10癸(みずのと)酉(とり)癸酉(みずのと・とり)

これで「十干」はひとまわりしたので、またもとの「甲」にもどります。

11甲(きのえ)戌(いぬ)甲戌(きのえ・いぬ)
12乙(きのと)亥(い)乙亥(きのと・い)

これで「十二支」がひとまわりしたので、またもとの「子」にもどります。

13丙(ひのえ)子(ね)丙子(ひのえ・ね)
14丁(ひのと)丑(うし)丁丑(ひのと・うし)
58辛(かのと)(酉(とり)辛酉(かのと・とり)
59壬(みずのえ)戌(いぬ)壬戌(みずのえ・いぬ)
60癸(みずのと)亥(い)癸亥(みずのと・い)

と続き、「十干」と「十二支」でちょうど「60」の組み合わせが出来ます。
61番目以降は、もとの「甲子」にもどります。

60歳のことを、「還暦」というのは、ここからきているということです。なるほど、納得。

また、野球の「甲子園球場」は、甲子(きのえね)の年(大正13年、1924年)に完成したので、その名がつけられたそうです。
他にも、「戊辰の役」とか、「丙午の年に生れた女の子は・・・・」という迷信も、干支によるものです。


<余談>

日本では、60歳を過ぎると、特定の年齢について「還暦」やら「喜寿」、「傘寿」などの言い方をします。
「還暦」は干支のひとまわりからきているのがわかりましたが、他の「喜寿」等は、干支と関係あるのでしょうか。調べてみました。

そうしたら、「干支」とは全然関係ないところで、組み立てられていました。ほんとのような、本当の話です。

まず「七十七歳」の「喜寿」。これは、「喜」という字の草書体が「七十七」で書かれているから。
「八十歳」の「傘寿」。これは「傘」を「八十」と略するから。
「八十八歳」の「米寿」。もうおわかりのように、「米」の字を分解すると、八十八になる。
「九十歳」の「卒寿」。これは「卒」を「卆」(九十)と略するから。
「九十九歳」の「白寿」。これはもっと凝っていて、九十九は「百」引く「一」。百から上の一をとると、「白」になるからとか。



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